「相続対策の極意」 

不動産コンサルタント技能     河合恭伸 著

この本にある「相続対策」は、財産の有無に拘わらず、全ての人が 準備すべきこと、全ての人が後始末に関係することです。
これらのことにを分かりやすく解説した本です。
(2004年3月出版)

 

<まえがき>

武術に書かれている極意書の中身は、何が「極意」なのかと思われるような、極く簡単な言葉が書かれている場合が多いようです。この本の「相続対策の極意」と表題にあります極意の内容も、結論から先に言えば、極めてありふれた内容のことです。つまり世情に、相続対策と言われている事を「実行」して頂くことが「極意」なのです。

ところが多くの場合、肝心の具体的な実行すべき相続税対策についても整理して記述した本が少なく、何から手を付けて良いのか、分かりずらいことも多いようです。そのため、自分で勉強する場合、いろいろな本から断片的な記述を拾い出し、手探りで取り組んでいられるのが実態ではないでしょうか。

加えて、相続財産のかなりの部分が不動産で占められているにも関わらず、相続税の問題だからといって法律と言った片面からしか検討されていない図書が殆どです。そこで、此処では、相続税に関する法律的な理解から、不動産処理の問題にも配慮した相続税対策の手順を説明し、よく質問のある応用問題にも若干触れてみたいと思い、この本に取りまとめてみました。

相続対策の問題は金持ちの話であって、自分のように基礎控除額以内の財産しかない者にとっては関係ない、と考えて居られる人たちも多いようです。事実、相続税を納める人は20人に1人と言われています。つまり5%の人だけが相続税を納めています。その他の95%の人はその限りに置いて関係無いこととなります。しかし、それはとんでもない間違いです。例え、残す財産は少なくても、少ないがために残された財産を巡って、見苦しい兄弟争いが多々起こっているのが実態です。相続対策の必要性は財産の多少ではありません。残された家族が、従来どおり円満に過ごして頂くための対策です。相続対策は「争族対策」であるとも言われる所以です。

又、相続対策について取り組むべき手法が例え分かっていたとしても、「その内に」とか、「そう言われるが」といいながら、対策がとられず、いたずらに日時を過ごしていられる方が多いのも実情です。そして対策がとられない侭に、ある日突然相続が発生し、後に残った相続人が右往左往し、申告しようにも、財産がどれほど何処にあるのかも分からず、不必要な税金を支払ったり、相続人の間で醜い遺産争いがあちこちで起っています。そのために、「対策を実行して頂くことが極意」ですと申し上げているのです。

そこで、相続対策問題について勉強してみようという方や、いろいろと相続対策について相談を受ける方のため、従来、銀行員時代から相談に預かってきたことや、ミニコミ誌「さわやか情報」に掲載してまいりましたものを抜本的に整理して、この本に纏めることにしました。この本1冊あれば、相続税の仕組みから、相続対策の手順や、ちょっとした言葉の意味まで分かるようにしたつもりです。

第1編に相続税の仕組みについて、誤解を恐れず、概要を判りやすく取りまとめてみました。ここでは、あくまで相続税にかかる全体の仕組みを理解し、相続対策を行う上で必要な法律の骨格を理解にて頂くことが主眼で、技術的な細部についての説明は省略しました。

一番基本的な相続税全体の仕組みについて理解して頂かないと、具体的な対策を説明しても、ご理解が十分行き届かない場合もあると思ったからです。それに基本的な相続税の仕組みが判れば、問題の8割は解決します。又ふと、「相続税の基礎控除額は幾らだったかな」とか、「相続人の相続割合はどうなっていたかな」など、確認したいときにも役立ち、説明文の根拠となる注記されている条文等を、出来るだけ付記し、六法全書により、その場で点検できる便利さを考えて記述したつもりです。

第2編の相続対策については大きく二つに分けて、財産を残す側の「被相続人の対策」と財産を受け取る側の「相続人の対策」があります。従来の解説書は何れかというと、相続人のとるべき対策に主眼を置いた本が多いようです。しかし、相続を起こる前の準備が大切です。準備が為されていれば相続人は被相続人の指示に従って、遅滞なく的確な相続対策をとることができます。しかし、全てが準備されているとも限りません。そのための項目を分けました。

被相続人対策として、遺言書を作ることは当然必要です。しかし、残すべき資産をまず整理しておくことから始めるべきだと思っています。隣地との明示が為されていないため処分できず、残された相続人が苦労しているのを多く経験しています。多くの相続対策関連本は、この部分には殆ど触れられず、既に為されているものとして記述されていますが、この点に目を向けて頂くように配慮しました。そのうえで相続対策の手順として、実務的な遺言書の作成方法の注意事項から、対策の基本な手順について説明しました。その対策も、ご主人の相続についてだけでなく、奥様の相続についても、目配りした対策が必要です。

こうして、被相続人による準備が十分整っていることを願っていますが、相続が開始されたとき、その準備が十分完了されないままであった場合の相続人の対策についても項を設けました。この場合の問題は、限られた期間内に遺産の分割協議を終え、必要な書類を整えて提出しなければ、優遇措置も利用出来ず、高い延滞税などを余分に支払うハメになったりします。手際の良い相続手順について説明しました。

第3編には応用編として、よく相談を受ける問題や、注意して頂きたい問題について取り上げてみました。しかし、すべての問題を網羅する訳にはいきませんので、物足りなさを感じられるかもしれませんが、その節はご容赦ください。

附則として、よく使用する言葉や、特殊な意味のある言葉について「言葉の定義」欄を設けました。似た言葉や、重要な言葉についての意味を明確に理解して頂くのに役立つと思います。また、分厚い六法全書は実務的に持ち歩けません。そこで「民法」「相続税」の条文について最低必要なものだけを抜粋して掲載しました。

すこし、欲張り過ぎた内容になったと思いますが、ここに書かれた事を参考にして、それぞれの立場にあった相続対策の基本方針を建てられる事を期待します。なお、内容には万全を期したつもりですが、実際の運用に当たっては事情がいろいろと違って参りますので、その都度、税務署等に確認をとりながら間違いの無いように対応して頂ければと思っています。

最後に本書を読んで頂いて、世間でよく耳にする相続争いもなく、親が築いた財産を元にして、残された家族の方々が円満に過ごされ、併せてよりよい生活を営まれるお手伝いができることを心から願っています。

平成15年 吉日                                 河合恭伸 識

 

-----------   目次  -------------

まえがき (対策2)

第1編 相続税の仕組み

 1章 民法第5編「相続」について (対策3)
  1 相続にかかる法律
  2 相続開始について
  3 相続人は誰 
  4 遺産分割について
  5 遺留分について
  6 遺産の内容
  7 遺産の分割
  8 相続の承認、放棄
  9 遺言書の作成
  10 遺言書の作成方法

 2章 相続税 (対策5)
  1 相続税法の規定
  2 みなし相続財産
  3 非課税財産
  4 相続税の優遇制度 
  5 相続税の計算方法
  6 各人の負担税額と申告書の提出
  7 納税と延納の申請等

 3章 贈与税 (対策4)
  1 贈与税のあらまし
  2 贈与税の納税義務者
  3 贈与の取得時期
  4 贈与税の課税財産
  5 使用貸借に係る取扱
  6 贈与税の非課税財産
  7 贈与税の各種優遇措置
  8 贈与税の課税計算
  9 贈与税の申告
  10 贈与税の納税

第2編 相続対策の基本

 1章 被相続人の対策     (対策6)
  1 遺言書の作成 
  2 資産の整理等
  3 資産の配分
  4 相続対策の手法

 2章 相続人の対策     (対策7)
  1 申告期限の確認
  2 相続の手順
  3 必要書類の準備
  4 遺産分割協議書の作成
  5 申告納税
  6 後始末

第3編 相続対策の応用事例 (対策8)

  1 不動産の評価額について
  2 遺言書の書き方について
  3 賃貸マンションの建設
  4 事業の継承
  5 遺産の処分
  6 遺産分割協議書の修正
  7 相続財産の処分
  8 小規模宅地評価制度の特例
  9 延納、物納申請
 10 相続時精算課税制度と他の贈与方法
 11 贈与税の配偶者控除

 

 

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