相続コンサルタント マル秘ノート

                   河合恭伸 著

この本にある「相続対策」は、財産の有無に拘わらず、全ての人が 準備すべきこと、全ての人が後始末に関係することです。
これらのことにを分かりやすく解説した本です。
(2004年3月出版)

 

<まえがき>

 相続対策の相談には三つパターンがあります。その一つは、出来るだけ相続税を少なく出来ないかという、一番ありふれた問題です。それに対して相続コンサルタントとしては、誰にでも公平に適用されている法律をよく理解し、適用の受け方を少し変えることで、無用に多額の税金を支払わなくても済むようにアドバイスすることです。例えば、相続税は累進税率になっています。財産を一人で受け取れば最高税率が適用されるときでも、二人に財産を分けて受け取ることで最高税率が適用されず、当然、二人分を足しても税金は安くなります。言われてみればその通り、といったことですが、税法に精通することで、こうしたアドバイスをいろいろな角度から検討して説明してあげることが私たちの仕事です。

 今一つは、所有されている財産の管理がどうなっているかという問題です。この問題についての直接的な相談はメッタにありません。しかし、相続の問題について相談を受けたときは、相続税額の問題以上に重要な問題なのです。相談を受けたとき、残すべき財産の中にこの問題が伏在していることを念頭に考えてあげることが本当のコンサルタントです。従来、相続問題を扱った本はこの視点についての説明がほとんど脱落しているように思えます。眺める土地は1千坪あり、何十年経っても手を加えなければ姿はそのままです。しかし、経済的な価値は刻々に変化しています。土地バブルのときの経済的価値は数十億円であったものが、今は数億円になっていることはザラです。しかし、経済的価値は下がっていても眺める土地の姿は一向に変りません。その姿に騙されて、多くの方が錯覚を起こしてしまいます。相続税の支払額を心配する以前に、既に大きく財産を失っていることに気づかずにいます。理屈では判っていても何の対策も立てようとされない方々が実に多いのが実態です。
 
  前者の相続税額を少なくしたいという問題には、残る人達にどの様な形で財産を引き渡したらよいか、後日紛争の起こらないようするにはどうすればよいかという重要な問題も含んでいます。これらの問題を狭義の相続問題とすれば、広義の相続問題としては、お持ちの財産の管理をどの様にする必要があるのかという問題が含まれているべきです。いずれかといえば、この問題の方が重要であるにも拘わらず、ないがしろにされています。しかし、これら財産管理の問題は残すべき財産を、減少させずに子孫に残そうという大きな問題を含んでいます。有効な対策を取らないままに日時が経過すれば、それだけで大きな財産的損失が生じてしまいます。

 三つ目に相続発生直後の相談です。これは後始末の問題です。基本的には相続対策のとりようがありませんが、これとて法律の適用をどの様に受けるかによって支払う税金は大きく変わってきます。この本のなかでは、これら三つの問題をいろいろな角度から考え、より適切なアドバイスをするためのヒントを提供出来ればと思って、この本を纏めました。

 相続問題について多くの相談を受けますが、相談の内容やタイミングが様々です。状況により、簡単に回答を出せる場合だけではありません。また逆に、簡単そうな問題であっても、子細に事情を聞くことによつて、本当の姿が見えてくる場合もあります。従って、相手の状況を正確に聞き取り、相談者が本当に必要とする対策を提示する必要があります。

 相談を受ける場合、慣れていても話題がアチコチに飛ぶことが多いものです。そのため、つい必要な事項を聞き漏らしたり、確認できていなかったりするミスが起こりがちです。こうした意味合いで、単純なことにも確実に聞き漏らさないようにするためには、予め「チェックリスト」を用意し、相手にも確認して貰いながら行うと、うっかりミスも防げます。

 対策についても、過去に取り上げた手法について、記憶に頼るだけでなく多くの事例について普段から研究し書き留めておけば、その中から一番適合する手法を探し出して回答書を作成することができます。また、よく出てくる事例のなかで幾つか、数字による「事例集」を用意し、その事例を参考に示しながら説明することで理解が得られやすく、説明もしやすいものです。そうすることでコンサタントに対する信頼や理解を得ることができます。

 本書では、相続問題のコンサルトを受けた時、的確、適切に話をすすめるうえでのお手伝いをさせて頂きたいと考えました。従って、この本を座右に置き、必要に応じて該当するページを開けば、大抵のことに適切な回答が得られることと思います。その場合、先に出版しました『残す人、受け取る人の相続対策の極意』(文芸社刊)で相続税、贈与税の基本的な理解や、残す側と受け取る側それぞれの側に立った相続対策について解説していますので、併せて参考にして頂ければ幸いです。

 以上を受けて、第1編では、相続問題のコンサルタントを志す人として、まず最初に理解を深めておいて頂きたい基本的な事項について触れ、第2編では、コンサルトを進める上での全般的な注意事項について解説しました。第3編では、財産を残す人の立場からと、資産を受け取った人からの相談について、具体的にコンサルトを進める上での手順と、最低必要な知識について触れました。第4編では相続問題に関係の深い法律を集約して掲載しました。第5編では主に資産を残す人の立場に立って、あらゆる角度からの相続対策の具体的な対策手法について説明しました。第6編では、基本的な事例について数字による事例集を掲載しました。そして最後に、コンサルトを行う上で必要なツールや、税率表や用語集も添付しましたので、この一冊を手許に置くだけで、深みのある相談に応じることが出来ると自負しています。活用して頂ければ幸いです。

平成17年1月吉日                      著者 識

 

 
 

-----------   目次  -------------

第1編 コンサルトに応じる前に

1,納税者は20人に1人
2,不動産所有者は相続税納税者の率が高い
3,争族防止策のお手伝い
4,資産活用による所得倍増策の提案
5,普段からの節税対策

第2編 コンサルタントの進め方

1,コンサルト料が頂ける相談を
2,相続対策の主な内容
3,資産の再検討
4,相続税額の把握
5,譲渡所得税についての勉強
6,相続対策の立案
7,参考資料の準備
8,不動産市況についての見通し
9,回答は慎重に
10,質問の仕方

第3編 相続コンサルトの実際

第1章 残す人からの相談

1,基本的な確認事項
(1)法定相続人と相続分
(2)その他遺贈先と遺留分
(3)推定相続人の廃除
(4)相続財産リストの作成
(5)その他の確認事項
(6)遺言書の準備

2,対策案の策定
(1)希望内容の検討
(2)基礎控除額の確認
(3)相続分と法定相続分
(4)遺留分の確認
(5)遺言書の作成と修正
(6)納税資金計画
(7)節税策の選択
(8)老人ホームへの入所
(9)不時費用の準備
(10)同族会社の活用
(11)不動産の整理
(12)預貯金、保険金等
(13)その他資産の整理
(14)生前贈与
(15)養子縁組
(16)相続分の廃除等
(17)債権債務の整理
 
第2章 受取る人からの相談

1,まず現状把握から
(1)法定相続人の確認
(2)相続執行責任者は誰か
(3)遺書はあったか
(4)資産内容について
(5)配分についての意向の確認

2,作業日程の確認
(1)期限内申告の厳守を
(2)各作業の確認
(3)相続の確認
(4)財産リストの作成
(5)必要書類の準備

3,節税対策と方針の確認

4,遺産分割協議書の作成

5,同意書の作成

6,申告納税
(1)期限内申告
(2)延納申請
(3)物納申請

7,申告期限後の相談

第4編 主な関連法令の取扱い

第1章 民法上の取扱
(1−1)法定相続分
(1−2)遺留分
(1−3)遺言書の作成基準

第2章 相続税法上の取扱
(2−1)相続、贈与の基礎控除額
(2−2)住宅取得資産等の贈与にかかる暦年贈与制度
(2−3)相続時精算課税制度
(2−4)配偶者に対する相続税額の軽減
(2−5)小規模宅地の評価減制度
(2−6)贈与税の配偶者控除
(2−7)農地等を贈与した場合の贈与税の納税猶予
(2−8)生命保険金、退職手当金控除

第3章 所得税上の取扱
(3−1)分離短期譲渡所得税の計算
(3−2)分離長期譲渡所得税の計算
(3−3)居住用財産を譲渡した場合の3千万円特別控除の特例
(3−4)所有期間10年超の居住用資産についての軽減税率の適用
(3−5)特定の居住用財産の買換えの特例の適用
(3−6)特定の居住用財産の買換えの場合の譲渡損失の繰越控除制度の適用
(3−7)居住用財産の譲渡損失の繰越控除の特例
(3−8)相続等により取得した居住用財産の買換え特例の適用
(3−9)固定資産を交換した場合の譲渡所得の特例
(3−10)特定の事業用資産の買換え特例
(3−11)既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え特例
(3−12)特定の交換分合により土地等を取得した場合の特例
(3−13)法律の規定に基づかない区画形質の変更に伴う土地の交換分合についての特例
(3−14)宅地造成契約に基づく土地の交換等についての特例
(3−15)収用等の課税の特例
(3−16)収用交換等の場合の5千万円特別控除の特例

第5編 対策例

第1章 同族会社の活用
(1−1)同族会社の設立
(1−2)同族会社への資産移転手法
(1−3)自社株の整理
(1−4)役員退職金の決定
(1−5)同族会社への寄贈
(1−6)同族会社への貸付金
(1−7)社長の保証行為
(1−8)債務、債務保証
(1−9)自社株の保有
(1−10)営業権の相続
(1−11)退職金特別控除と弔慰金
(1−12)管理会社による管理上の注意事
(1−13)方針への収益物件移転メリット

第2章 不動産関連事項についての対策
(2−1)賃貸住宅の贈与
(2−2)賃貸住宅を建設
(2−3)定期借地権の取扱
(2−4)定期借地権の相続
(2−5)残地扱いの土地の贈与
(2−6)小作農地の整理
(2−7)小作権は借地権ではない
(2−8)農地の相続準備
(2−9)別荘の整理
(2−10)不動産譲渡損益の処理
(2−11)広大地の評価法の改正
(2−12)買換え特例の使い方
(2−13)借地権の使用貸借
(2−14)固定資産税の取扱
(2−15)土地の評価
(2−16)土地の取扱い
(2−17)土壌汚染法対策

第3章 贈与税関連事項の対策
(3−1)住宅取得資金贈与制度の活用
(3−2)相続時精算課税制度の活用
(3−3)配偶者控除
(3−4)誰に何を遺すか
(3−5)小規模宅地評価減制度の活用
(3−6)居住用財産の譲渡の特例
(3−7)贈与の取り消し
(3−8)預貯金等の名義変更
(3−9)不動産等の名義変更

第4章 その他事項の対策
(4−1)動産の相続
(4−2)生命保険による納税資金準備等
(4−3)変額年金の利用
(4−4)生命保険金特別控除
(4−5)生命保険契約の活用
(4−6)遺族年金としての受給
(4−7)借金の相続
(4−8)団体生命保険と住宅ローン
(4−9)債務超過のケース
(4−10)ゴルフ会員権の整理
(4−11)美術品等の寄贈
(4−12)仏壇や墓地の購入
(4−13)収益マンションの取扱

第5章 納税資金対策
(5−1)相続発生後にかかる税金
(5−2)贈与税基礎控除の活用
(5−3)保証債務などの清算
(5−4)物 納
(5−5)相続税の物納
(5−6)アパートの底地を物納に
(5−7)重要文化財による物納

第6章 相続人等に関連する対策
(6−1)養子縁組み
(6−2)相続分の放棄
(6−3)相続人の廃除
(6−4)「相続欠格」と「相続廃除」
(6−5)養子の検討
(6−6)遺産分割の禁止
(6−7)遺産分割協議の当事者
(6−8)遺産分割のやり直し
(6−9)産分割協議の変更
(6−10)遺産分割協議書の書換え
(6−11)遺産分割協議書と物納

第6編 計算事例

1,相続税の課税計算例
(1−1)相続税の基本的な計算(1)
(1−2)相続税の基本的な計算(2)

2,贈与税の課税計算例
(2−1)暦年課税制度
(2−2)暦年課税制度と通常贈与の違い
(2−3)相続時精算課税制度

3,譲渡所得税の計算
(3−1)短期譲渡所得税の計算
(3−2)長期譲渡所得税の計算
(3−3)不動産の買換え特例
(3−4)居住用財産譲渡にかかる損失の繰越控除
(3−5)特定事業用資産の買換えの特例換

4,不動産の有効管理
(4−1)賃貸住宅による評価減
(4−2)不動産管理会社の設立

5,相続方法の選択
(5−1)小規模宅地評価減の利用
(5−2)相続財産の譲渡
(5−3)一次相続と二次相続の対応

6,同族会社の活用
(6−1)同族会社の設立と資産の移転
(6−2)賃貸マンションの管理を委託

<資料>
1,各種税率表
  相続税・贈与税・所得税率の速算表
  取得税・登録免許税
  消費税・固定資産税・印紙税
2,定期金に関する権利の評価
3,コンサルタント報酬額表
4,コンサルタント契約書
5,相続順位一覧表
6,遺言書の作成例
7,コンサルト・チェックリスト
8,限界贈与額一覧表
9,相続税・贈与税用語集

 

 

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